中国、元時代のブッタの壁画

メトロポリタン美術館、アジア・ウィングのなごみの空間

メトロポリタン美術館には、私の、お気に入りの部屋が、いくつかあるのですが、そのうち一つは、アジア・ウィングの入ってすぐの、中国の元時代に描かれたブッダの壁画の展示してある部屋です。この部屋は、壁一面が壁画となっていて、部屋の中央にベンチが置いてあるので、空いていれば、ゆっくり座って、壁画を眺めるなり、少し休むなり出来ます。壁画は、縦7.5メートル、横15.11メートルと、かなり大きなもので、メトロポリタンの作品紹介ページの写真では、こんな感じです。

薬師仏 壁画/Buddha of Medicine Bhaishajyaguru (Yaoshi fo)

でも、上の写真は、実際とはちょっと違う感じなのですよね。この写真は、壁画の縦が7メール以上あることから推察して、梯子の上など、高さあるところにのぼって、撮られたのだと思うのですが、そのせいで壁画の大きさが、あまり感じられないのです。実際に、壁画を見るとき、全体や、ブッタの顔付近を見ようとすると、かなり見上げる感じになります。下の、部屋の入口付近から、私が撮った写真を参考にしてもらうと、どれくらい大きいか、わかってもらえると思います。(閉館間際だったので、METの職員の方が、私に向かって「とっとと、帰れ!」と指示しています!でも、そのせいで、壁画のサイズがわかると思います。)

薬師物 壁画 全体

メトロポリタン美術館、アジア・ウィング

この壁画があるメトロポリタンのアジア・ウィングには、アジアの現代アートのようなものは、あまり展示されていず、時代的には、紀元前の中国文明から始まって、日本で言えば江戸時代くらいまでの作品が多いように思います。仏像も、かなりの数所蔵していて、この壁画の置いてある部屋にも巨大仏像が展示してありますし、他の部屋で仏像ばっかり置いてある部屋もあります。仏像がたくんさんあるせいなのかはわかりませんが、アジア・ウィングは、お寺的な雰囲気があり、それでもお寺でないのは明白なので、なかなか不思議な空間となってます。特に、ヨーロッパの絵画をしばらく見た後に、ここに来ると、私なんかは、その文化のギャップに、面食らって、ちょっとしたカルチャーショックを味わいます。フランス料理のコースを食べた後に、お饅頭がデザートで出て、なんかその落差に体がついていかないみたいな感じでしょうか。体やら脳がまだアジアにすぐに馴染まない場合、しばらく、この壁画の前のベンチに座って、アジアモードになるまで休むと、だんだん、ほっとしてきます。

そういえば、何年かまえ、別の仏像が沢山おいてある部屋で、黙想をしている白人の男性をみかけました。その人が、定期的に、メトロポリタンのアジア・ウィングで黙想しているのか、たまたま来て黙想したくなったのかわかりませんが、そういうのを見ると、なんか邪魔しちゃ悪い気になって、私は、そそくさと部屋から出て行った記憶があります。今から考えると、美術館なんで、展示見てる人が黙想してる人に気使う必要はなかったんですが。

薬師仏まんだら

この壁画のタイトルは、Buddha of Medicineで、中国語で薬師佛と表記してあります。薬師仏とは、日本でいう薬師如来のことで、この壁画は、薬師如来の浄土における様子を表しているとのことです。私は、仏教のことはあまり詳しくなく、薬師如来とついても、ほとんど何も知らないのですが、それでもこの部屋が好きで、たまに来てなごんでいます。このブログを書くために、ちょっとリサーチする数日前まで、私は、この壁画を、「メトロポリタンのまんだら」と呼んでいました。ブッダを、他の菩薩(bodhisattvas)やら、それらを守護するウォーリアー(worriors)が、取り囲んでいまる様子が、マンダラのように見えるからです。

構図的には、上の方に天使のようなものが浮遊していて(Apsarasasという、ヒンズー教における天空に住む女の精らしいです)、少し、キリスト教の宗教画を思い起こさせるますよね。たとえば、この絵なんかは、少し構図が似ているでしょうか。

「ヴァージンマリアとその子」/Virgin and Child with Four Angels, G David

G.David Virgin and Child with Four Angels

こういう、キリスト教と仏教画の構図の似た要素というのは、やっぱりインドがインド・ヨーロッパ言語圏に属していて、インド古代の神話とギリシア神話に似た要素があったりするところに関係していたりするのかしらと、思ったりします。私が、アメリカでクラシック学部(ギリシア、ローマ帝国時代の言語、および文化の専攻)の授業をとった時、ギリシアは、インドと文化的共通点が、古代に多かったということが協調されていました。それは、インド以東の中国日本は「違う」文化圏であるということの協調でもあり、そういった語族による文化の定義が、現在でも、アメリカにおける「白人」という人種の定義にも使われています(アメリカでは、インド人は法律的には白人となります)。けれど、この壁画を見ていると、中国の仏教壁画に、ヒンズー教の精、Apsarasasが描かれていたり、薬師仏の壁画と、キリスト教の宗教画の構図に、共通点をみつけることもできるなど、結局、それぞれの文化を、ここから異種とはっきりとわけることは、本当はできないということがわかります。さきほど、私が言ったように、西洋文化とアジア文化とは、体で違いが感じられるほど、ギャップがあるのは明白ですけど、インドなどを経由点として考えると、ギャップも埋まって行き、「なんだ、つながってたんだ。」と思えるようになります。

色あせて、なお美しい壁画

私がこの壁画に癒されると感じる理由は、一つには、色にあるのではないかと思っています。600年前の歳月を経たこの壁画は、専門家の手で修復されているのでしょうが、かなり色あせています。そして、その色のあせかたが、また、絶妙な感じなんです。

薬師仏 壁画 詳細

ここで、興味深いのは、上の、ヴァージンマリアと天使の絵は、16世紀に描かれたものなのですが、ほとんど色あせていないということです。こういった色の保存のされかたの程度は、保存状態などの差が、原因なのかもしれませんが、使われている絵具が原因かもしれません。この薬師仏の壁画は、水性の絵具で、粘土と藁をまぜた土台の上に描かれていてるのです。水性の絵具というのは、通常水分や日光に弱く、油絵に比べると色あせなどは早いと思われます。逆に、水彩の絵具で600年も前に描かれた壁画にしては、よく保存されている(修復は途中で加えられているとしても)と、驚いてしまいます。

それにしても、こんな素晴らしい壁画が、元にあった場所から遠く離れたニューヨークにあることについては、少し複雑な気持ちなります。ニューヨークにあるからこそ、私が見れるのですが、あるべき場所は、中国のようにも思えます。メトロポリタンによると、この壁画の持ち主だった中国の寺院が、お寺の修復費用を出すために、売りにだしたそうなのです。メトロポリタンには、この壁画の持ち主となった人物から寄贈されたということ。いつか、この薬師仏が、元の場所に戻る日はくるのでしょうか。

ということで、本日の作品は、薬師佛の壁画/ Buddha of Medicine Bhaishajyaguru ca.1319でした。

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