ポール・セザンヌの水彩画 

セザンヌの油絵「レスタックから見たマルセイユ湾」に続いて、今日は、セザンヌの水彩画について、書いてみたいと思います。私のまわりには、セザンヌの水彩画が、油絵より好きだという人がいます。私は、セザンヌは、水彩画を完成された絵として、人に見せるためではなく、スケッチや、色の感じをみるために、つまり自分のために、描いていたと考えています。そのため、水彩画を見ると、セザンヌの絵についての考え方、思考を理解することが出来ます。けれど、セザンヌの水彩画の実力は、サージェントやターナーといった水彩の巨匠に比べると、見劣りします。やはり、セザンヌは、油絵の人だと思っています。けれど、今日、紹介する木のスケッチなどは、実際見ると、かなり美しいで、好きですが。

セザンヌの水彩画は、オンラインで検索してみることが出来ます。けれど、写真では、色の感じなど、実物の繊細さは伝わりません。メトロポリタン美術館は、セザンヌの水彩画を所蔵していますけれど、なかなか展示される機会もないため、実際に見るには、ドローイングとプリントを扱う部署で予約をとって、見せてもらうのが一番です(この予約は、誰でも無料でできます。)今回の、下の作品も、ドローイング・ルームで見てきたものです。(現在は、COVID19のために、閉館中です。)

ポール・セザンヌ水彩画「風景画」/Paul Cezanne "Landscape" Watercolor

光と色の関係

私たちが、世界の様子を見ることができるのは。光があるからです。いくら人間に視覚が備わっていても、世の中が真っ暗だったら、物の形を見分けることは出来ません。太陽から光が地球に届いて、その光が世界を照らし、そして反射することで、私たちの視覚を刺激しているのです。

さらに、色というのは光と深く関係していますけれど、人間の外側にあるのではなく、私たちが色を認識する機能を持っているからこそ見えるものなんです。それに対して、光は人間の外の世界にあるものかといえば、そういえると思います。少なくとも、光は太陽から、地球に届いているという現実があります。つまり、色の世界は、光があることで、人間の知覚システムが作りだしている世界なんです。

セザンヌの水彩画を見ると、光と色の関係について、思い起こさせられます。この絵のおもしろいところは、光の表現の仕方、そして色使いです。セザンヌは、風景をプリズムを通した光で、表現しています。木の下の影の部分も、色を濃くするだけではなく、明るい部分を表現するのに使った色を、濃い色の上に重ねています。実際の世界がこのように見えることは、まずありませんので、この絵の世界は、セザンヌの創作した風景です。絵を実際の世界に近づける努力というのは、この水彩画では、最低限と言えます。

興味深いのは、私が先ほど言った、色というのは光があるからこそ、私たちが認識できるというところを、セザンヌがひっくり返して、光を表現するのに、実際に見えているわけではない色を使っている点です。

木立を見上げると、葉や枝に間から、空が見えるものです。セザンヌは、空が木の後ろにあるという風に描くのではなく、空が木立に溶け込んでいるように表現しています。それだけではなく、幹や枝、地面の影部分にも、空や光が溶け込んでいます。また、通常影の部分に使われる、暗い色をほとんど排除しているのも、特徴です。奥行きを表現することで、三次元の世界を二次元で描くということも、ここでは、あまりありません。遠くの木立は小さく表現されているので、多少の奥行きはあるものの、全体的にはより平面的な絵となっています。こういった、セザンヌの絵の世界をたくさん見ると、現実がセザンヌの絵のように見えてくるから不思議です。

絵を見るという行動は、見えている世界を変化させる力があるようです。

というわけで、今日は、セザンヌの水彩画について書いてみました。

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