デイヴィッド・ホックニー 「ヨークシャー 7つの風景」

ニューヨークは、世界中から色々なものが集まっている場所なので、忙しくしようと思えばいくらでも、忙しく出来る街です。ビジュアルアート関連だけにしぼっても、美術館もたくさんあるし、ギャラリーも多いので、その時々、興味のある展示を全部見に行っていたら、自分の絵の修行は、全然できなくなってしまいます。私は、このブログをやっていることもあって、メトロポリタン美術館には、しょっちゅう足を運んでいますが、ギャラリーで今注目されるいる作品を見たりする暇は、なかなかありません。でも、先日、ペースギャラリーで、<The World According to>というグループ展示会があり、デイヴィット・ホックニーのデジタル作品も見れるということで、行ってきました。

ペース・ギャラリー

ペースギャラリーは、大手のギャラリーでニューヨークだけでも、三店舗、加えてロンドン、ジェノバ、北京、香港、ソウルなどで展開しています。今回、私が訪れたのは、ミッドタウン・イーストのビルの中にあるギャラリーです。

この展示会は、グループショウと呼ばれる、複数のアーティストの作品を集めたものです。デイヴィッド・ホックニーの

多くのアーティスト、色々な種類のアーティストは、世界を(一般の見方とは)違った見方で見ているのです。

という言葉を基軸として、キュレーションされています。展示の仕方で、面白いと思ったのは、複数のアーティストの作品が展示されているのに、作品の横に、作者の名前を書いたプレートが、添えられていないことです。誰の作品か確認するためには、ギャラリーが用意したファイルを見る必要があります。私は、こういった展示の仕方に慣れていないため、少し面食らったのですが、実は、余計な情報を入れずに作品を見れるというメリットが、あります。ギャラリーの中には、作品の値段を表示する場所もあり、そうなると値段を確認してから見るということになってしまい、先入観を持って見てしまいます。

デイヴィット・ホックニー 「ヨークシャー 7つの風景」

ペースギャラリー 「The World According to」デイヴィッド・ホックニー「ヨークシャー 7つの風景」

ペースギャラリー 「The World According to」デイヴィッド・ホックニー「ヨークシャー 7つの風景」(後方)

デイヴィッド・ホックニーは、非常に成功している画家で、現在、80代ですが、若いころから注目された画家です。おととし、大規模なホックニー展が、メトロポリタン美術館が開催され、初期の抽象画から、最近のiPadを使って描かれたデジタル作品まで、多くの作品を見ることができました。抽象画が主流の時代に、リアリズムを追及することを選択、風景画(プールを描いた作品が有名です)や人物画などを、精力的に制作してきました。イギリス出身なのですが、ロサンゼルスに長く在住、西海岸の乾いた空気を表現している作品が、多くあります。私は、ロサンゼルスのお金持ち社会が描かれたような作品よりは、故郷のヨークシャーを描いた作品が好きでした。

ペースギャラリーでは、18のスクリーンに、ヨークシャーの林や、雑草が風になびく様子を、映し出した作品が展示されていました。一つのカメラで撮ったものを、18分割したのではなく、18個のカメラをホックニーの車に設置、運転しながら、同時に撮影されたものです。この作品の前に立つと、全体らしきものは見れますが、1つ1つのスクリーンの映像が、完全につながっているわけではなく、ギャップや重なった部分があるので、見ていると不思議な気分になります。ホックニーは、この作品について、全体を一度に見ることは不可能であるため、(どの視点をとるかという)選択肢を与えられ、その結果「新しい物語の可能性」が生まれるとしています。「全体を一度に見ることは不可能である」というのは、普段は気づきませんが、人間の視点というのは、移動させることで全体をつかんでいるので、大きな作品の場合、全体を一度に見ることは出来ないということ示唆しています。さらに、この18個のスクリーンをつなげたホックニーの作品では、1つ1つのスクリーンに映し出される映像が独立したものなので、全体を見渡すことが、より難しくなります。人間の視点の特徴を、見る人に再認識させているのです。

ホックニーというアーティストは、長くアートシーンで成功を収めて来た重鎮であるにも関わらず、このように新しいタイプの作品を、世に出していきます。そのために、最新の技術も臆せず導入して、「こうしたら、もっとおもしろい作品が出来るんじゃないかな」という挑戦を、当たり前のように、常にしているのです。絵の学校に行ったりしていると、絵を上手く描ける人というのは、本当にたくさんいることに気が付きます。そういった中で、頭一つ抜けるアーティストや、アート史に名前を残すような人というのは、ある意味、革新的であるという特徴があります。自信をもって、今まで伝統を超えて(壊して)行ける人達、独自の視点を打ち立てられる人達なのです。そういうアーティストは、作品を見る人の一歩先を行っていて、ある意味では、見る人の視点を、その先に誘導していると言えます。

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