オディロン・ルドン「パンドラ」

オディロン・ルドン「パンドラ」(油絵)/Pandora by Odilon Redon (Oil on Canvas)

この絵は、メトロポリタンの2階、ロダンの彫刻が沢山置いてある細長い部屋の奥の方の壁にかかっています。この部屋は、私の好きな印象派の部屋のとなりだし、何度か来たことあったけれど、通路側に抜ける前にある大きな彫刻の近くに、この絵があるのに気づいていませんでした。それで、発見した時には、「あー、好きな感じの絵だな。」と思って見ていたんだけど、その時、作者の名前Redonを、Rodinと読み間違えて、「ロダンもこんな絵描くのか。」などと、思ったりしてました。ロダンの彫刻は、躍動感あふれていて、筋肉や体の動きを表現したものなのに、作風違うんだなと思ったのです。それで、再度、作者の名前を確認して、納得。

私がこの絵、好きなのは、色が美しいこと。淡い暖色が大部分で上の方に寒色が使われています。人物は、アウトラインで囲まれているけれど、背景が肌の色に近いので、周りに溶け込む感じかつ、ふんわり浮いてる感じです。ロダンの存在感ある肉体とは違うタイプの表現。

それと、もう一つ、私がこの絵が好きな理由は、モチーフがギリシア神話のパンドラっていうところ。パンドラは、あの「パンドラの箱」のパンドラ。パンドラは、人間びいきのプロメテウスにだまされたて怒ったゼウスが、男性のみで生活していた人間に送った最初の女性で、災いのつまった壺を持って人間のところに送り込まれます。そして、壺を開けたとたん、幸せに暮らしていた人間の世界に、災いや苦しみをまきちらたのです。最初の女性が、人間(男性)に災いをもたらしたって言うのは、女性の地位が低かった古代のギリシアで、もちろん男性が作った神話なんだろうから、賛成はしないけれど仕方ないから文句は言わないとして、この話の一番おもしろいところは、壺の中には、「希望」も入っていて、蓋が開いた時に、「希望」は外に出ず、壺の中にとどまったというところ。この部分について、ニーチェが、「希望というのは、苦しみを長引かせるという意味で、もっとも最悪のもので、ゼウスが人間に送った災いの中でも最悪のものだった。」と解釈をしています。「希望」は、壺の中にとどまったので、人間は時々「希望」の入った壺を取り出して、期待してみるけれど、「希望」を持つというほどの災いはないという、それもまた、何というか恐ろしい話。

人間の生活や社会には、説明不可能な苦しみや残酷さがあって、この色々な風に解釈できるパンドラの話は、そういう苦しみの起源を何とか神話の形で説明しようとしてるんだけれど、その説明さえも不可解で解釈次第というところが、この神話のおもしろく、また深いところです。

ルドンのこの絵は、とてもきれいな色を使っていて、壺らしきものを持ったパンドラのまわりには、お花が描かれているので、壺の中に入っている災いや悪については、タイトルを見ない限り思いがいかないんだけど、タイトル見てから、絵を見ると、きれいなだけではないものを見たような、気持ちになるという二重構造。ちなみに、絵の横にある美術館の説明には、第一次世界大戦の到来を象徴している可能性があると書かれています。

さらに、私が驚いたのは、ルドンを調べていて、彼の作品には、Japonismという日本の芸術の影響があって、または彼はヒンズーや仏教に興味を持っていたという記述を見つけたこと。私が、感覚的に、「あーこの作品好きだなー」と思ったのも、その日本的さゆえの可能性は大。上部の木の枝の描き方など、確かに日本的。

パンドラ オディロン・ルドン(油絵)細部/"Pandora" by Odilon Redon detail (Oil on Canvas)

というわけで、本日の作品は、オディロン・ルドン「パンドラ」/ Odilon Redon Pandora (ca.1914) でした。

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