長沢芦雪 「鶴図」

言葉にならないものを、コミュニケーションする長沢芦雪の丹頂鶴

絵を描くことを練習したり、どうやったら絵が上手くなるか考えている時に、新しい外国語を習得しているように感じる時があります。絵というのは、なかなか上手くならないものですし、上手くなるのは、良い先生との出会いや、専門的な学校に行ったりするのも効果的ですけれど、自分なりの工夫も大切です。また、『毎日描く』というような、反復運動が不可欠になってきます。気分が乗らないからといって、「今日は休み」みたいなことを言ってたら、上手くなりません。私も、「嫌でも描く」ことを習慣化させるようにしています。語学も使いこなせるようになるには、今言ったようなことを積み重ねる必要があります。そして、絵の練習にしても語学の習得にしても、少しは上達していたとしても、常に目標地点は、まだまだ気が遠くなるほど先のように感じる、というところも同じです。

絵の練習が、外国語習得と重なりやすいのは、もう一つ、ビジュアルアートというものが、非言語コミュニケーションであるということがあります。では、アートは、何をコミュニケーションしているかというと、往々にして、言語化出来ないものを、コミュニケーションしています。なので、伝達される内容について、ブログの描いたりすることは不可能ということは、よくあることです。

例えば、下の、長沢芦雪の、丹頂鶴を描いた二つの掛け軸は、文句なしに、シンプルに、「何か」コミュニケーションしています。けれど、何をコミュニケーションしているのかというと、これと言って説明できません。知り合いの子供に、見せたところ、「うん、これ好き!」と言っていましたけれど、その気持ちわかります。単純に、「これ好き!」と言うのが合っているような、作品なのです。

長沢芦雪「鶴図」/Rosetsu Nagasawa "Cranes"

長沢芦雪「鶴図」/Rosetsu Nagasawa “Cranes”

長沢芦雪「鶴図」/Rosetsu Nagasawa "Cranes"

長沢芦雪「鶴図」/Rosetsu Nagasawa “Cranes”

長沢芦雪のミニマリズム

メトロポリタン美術館で、この二枚の掛け軸は、ならべて展示されていました。縦が、1メートル50センチある掛け軸ですが、描かれているものは、丹頂鶴のみです。構図もシンプルですし、物語のようなものが暗示されているわけでもないようです。美術館の解説では、「全体的に、驚きとユーモアを誘う」となっていました。確かに、一枚目の絵では、鶴がこちらを向いているので、「ユーモアを誘う」と言えばそうです。けれど、受けを狙っているわけでもないようです。私としては、そのシンプルなデザイン性ゆえに、印象に残る作品だと感じます。私は、日本人なので、「わぁー鶴だ!」という反応です(丹頂鶴とは気づきませんでした)。

西洋の巨匠であるドラクロワが描いた、虎と比較してみると、同じインク画でありながら、長沢芦雪のミニマリズムは明白です。

ウジェーヌ・ドラクロワ 「虎」/Eugène Delacroix "Crouching Tiger" (ink)

ウジェーヌ・ドラクロワ 「虎」/Eugène Delacroix “Crouching Tiger” (ink)

芦雪の鶴には、ドラクロワが使用しているハッチングといわれる、奥行きを持たせるための線はありませんし、鶴の模様も最小限です。また、ドラクロアの虎に比べて、非常に動きの少ない静かな絵となっています。こうして比べてみると、心に残る作品を作るには、色々な方法があるということがわかります。私は、芦雪の二枚目の絵の、鶴の目の描かれ方が好きです。

長沢芦雪について

長沢芦雪は、18世紀の中頃の京都の生まれで、丸山応挙の弟子でした。串本にある無量寺というお寺に、応挙と芦雪に特化した作品館があり、そちらのホームページに芦雪の生涯についての記述があります。、酒好きで奔放な奇才であったとのことです。

ということで、本日は、長沢芦雪「鶴図」/Rosetsu Nagasawa “Cranes” (1780s)についてでした。

文中で紹介したドラクロワの虎のインク画についての、ブログ・エントリーはこちらとなります!

ドラクロワの、鉛筆画やインク画を、メトロポリタン美術館で見てきました。ロマン主義の巨匠が、どのように絵の練習をしていたかが、この展覧会では見れます。この虎の絵は、たぶん短時間でかかれたものですが、躍動感があって、ドラクロワの対象を観察して表現する技術を象徴している作品です。

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